キュキュッ。
「はい、これでよしっと‼」
黄色い帯を叩かれ、友加里に向き直る。
「うん、よく似合ってる」
「なんとか入ったし、間に合ったみたい」
「帯を締める時に、あたしのパワーも注入したから、絶対に大丈夫だよ」
なにより頼りになる、友加里の大きな笑顔。
「細井さん!次はメイクよ‼」
部屋に入ってきた夏美がメイク道具を掲げたが、わたしを見ると[一時停止]してしまった。
「やっぱりやめればよかったかな?」
夏美がまだ動かないので、不安げに尋ねた。
「違うわよ!よく似合ってる‼けど、随分と思い切ったなぁて。じゃ、メイクも変えないと」
「でも石川さん、わたし、メイクなんていいわ。したことないし」
「ダメダメ!メイクで3kg分くらいごまかせるから‼」
自信満々の夏美に強引に座らされ、どんどん変わっていく、自分の顔。薄いピンクの紅が引かれると、
(だ、誰?)
「はい、完成!これで100%うまくいくわ。いかないはずがないって感じ」
鏡を通して太鼓判を押す夏美に、
「逆に失敗したらあんた、あんたの人間性を疑うくらいだわ」
友加里がいつもの毒を吐く。
そんな2人に見送られ、わたしは約束の場所に向かった。