いつもの帰り道。


隣で自転者を押す、いつもの高い景色。


だが、今日は違ったのだ。


「細井さん、試合にもエントリーしたんだね」

「おだてられちゃって。大丈夫かしら?」

「大丈夫だよ。ただ、技をキレイに決めようとしちゃダメだよ。がむしゃらに殴る!これが一番」

「やだ、今から緊張してきた」


身震いするわたしを見、実が笑う。


いつもの優しい笑顔、ホッとする笑い顔だったが、急に真顔になると、


「もうすぐだね」

「うん…」


言葉少なに答える。


それだけで通じたからだ。


「僕も経験あるから、細井さんにはうまくいってほしいけど…前にも言ったように、僕は待ってるから」


そうハニカム、実。


だが、わたしは同じように笑うことができなかった。


「小林君。わたし、こっちがダメだからあっちって、そんなのダメだと思うの。気持ちは嬉しいんだけど、相手の人っていうか、小林君にも失礼だから。だからわたし…」


そこまで言うと、実はプッと吹き出した。


真剣に答えたというのに‼


「細井さんならそう言うと思った。でも、僕は待ってる‼七夕の祭りがあるみたいだから、よかったら行かない?」