いつものテコンドー。


だが、今日は違った。


「今日は師範代が遠征で、代わりの先生みたいだね」


帯を締めながら実が教えてくれた。


そうみたいね、と返事をしながらも、わたしは先生を横目でチラチラと見る。


「はい柔軟から始めましょう!まずは屈伸から!」


年は三十代半ばだろうか。


深くアキレス腱を伸ばす姿も様になっており、一つ一つの動きにも、ムダと迷いがない。少しメッシュを入れたボブカットの先生は、とても綺麗だった。


「蹴りの練習から!」


ようやくバランスを保てるようになったのは、自主練の賜物だろう。周りでは、フラフラしている生徒が多い。


「こう、顔は前を向いたほうが、やりやすいかも」


隣の初心者にアドバイスする、ほぼ初心者。


「次はかかと落としよ!ちゃんと腰を入れて!」


顔に脚がつくほど高く上げ、雷鳴のごとく振り下ろす。モーゼの十戒のように、そこだけ空が裂けるようだ。


だが、かかと落としには隠れた自信を持っている。


「ハッ!」


気合を入れて振り下ろす。


「あ、床につくまでに止めて、その時に腰を入れたほうがいいですよ」


またもや調子づいて教えていると、


「ちょっとあなた!」