「意地悪な顔できてるやん!役ん時、俺に熱いたこ焼き食わしたん思い出し。アカデミー賞もんやで。なぁ?」


「そうね、そう思う」


わたしには(悪魔の微笑み)にしか見えませんでしたが。


夏美を見ると、嬉しそうに口角が上がるのを、必死でおさえているようだ。


「褒めたってあげないから‼」

「いらんわ!」

「ま、半分ならあげるわよ」

「どないやねん‼」


夫婦漫才を披露しながら、肩を並べてたこ焼きを食べる2人。パッと見は、モデル雑誌の表紙みたいだ。


「あかんわ。逆に火ついてもうた。今から俺ん家でたこ焼きパーティせえへん?」

「賛成!大賛成です‼」


跳び上がって喜ぶ太志。


「お前も来るやろ?」


正樹は、わたしではなく、夏美に聞いた。わたしはどうせ腹を空かせてヒョイヒョイついてくると思っているらしい。


「行かないわよ‼ま、細井さんがどうしてもって言うんなら、行ってあげてもいいけど」

「面倒くさいやっちゃな~。ほな決まり‼」


立ち上がり、皆で正樹の家に向かう中、


「あ!野崎先生とミーティング忘れてた!あとからすぐ行くから先に行ってて‼」


首を傾げる太志の手を強引に引っ張り、学校に戻る。振りをする。


たっこ焼き、たっこ焼き♪と呑気に歌っている太志の夢を粉々に砕き、それでも食べたいと渋る、ダイエット部の副部長に一言、


「諦めなさい!部長命令よ‼」