「く・だ・さ・い・でしょ?」


この世では、たこ焼きを割り箸で挟んでいるものが、絶大なる権力を誇示する。ひれ伏すしかないのだ。勝ち気な関西の血を、逆流させてでも。


「く、ください」


「あら素直だこと。ちょっと待って、これフウフウしたやつだから、いい食べ頃よ、ハイ」


割り箸を突き出す夏美。


その言葉を引き継ぐと、あとに続くのは[アーン]。


「早くしなさいよ!私まだ食べてないんだから‼」


「ほ、ほな遠慮なくいかしてもらうわ」


アーンと口を開け、パクっと入れた拍子に、表情が激変したものが二名。


「熱!熱熱熱っつ‼」


のたうちまわる正樹と、


「まんまと騙されたわね。そっちのは熱いのよ、馬~鹿‼」


悪い笑みを浮かべる夏美。


再び表情を変えた正樹が立ち上がり、夏美に食ってかかる!かと思ったが、夏美の鼻先を指差し、


「それやん!」


「な、なによ!」


「その顔やて!」