(やめてよ~!!)


頭を抱える。


だが、凍りつく場を溶かす方法がたった一つだけあった。


「ほい!出来たよ‼」


真っ先に駆け寄る太志の手に、なかなかキレのあるダンスを披露する、かつおぶしが見える。


「食べようよ、熱いうちに!」


それぞれが焼きたてのたこ焼きが乗った、木船の皿を手に、笑顔になる。


が、


「なんで分かったのよ!」


夏美が、今まさにたこ焼きを口に入れようとした正樹に食ってかかり、


「なにがや?」


「私の役よ。すんごい意地悪な役なのよ。でも、うまく出来なくて…」


たこ焼きを抱えたまま俯く。


「なんでもええけど、今はたこ焼き食わしてくれ。あのオッサンがどれだけの腕か、買い手と売り手の勝負やねん!」


熱く語るが、


自分で突っかかっておいて、涼しい顔で、たこ焼きにフウフウしている夏美。


ここからは、しばらく、イケメン正樹のツッコミ劇場をお楽しみ頂こう。


「なんやねん!ま、ええけど、これでゆっくり………て、力士‼お前なに人の分まで食ってんねん!飲み物か!たこ焼きはお前にとっての、ちょっとした冷たい飲み物か!ほな真琴………なんで急いで食うねん!3つ一気に口に入れて、死にそうな顔しとるやないか!アホか、また買えばええちゅう話や。美味しいもんは待つのも楽しい言うてな………て、オッサン!なに片付けてんねん!生地切れた?うそやん!そんなタイミングで切れんの、うそやん!俺、食われへんだ………て、お前いつまでフウフウしてんねん!くれるやろ?一個くらいくれる優しさはあるやろ?」