顔を上げると、


「真琴!こっち‼」


遠くで手を、グローブをした手を振る悠太に、思いっきり野球のボールを投げる。


ボールは一直線に、ほぼ校庭の真反対にいる、悠太のグローブへ。悠太が全く動く必要がないコントロールと、肩の強さに、野球部から歓声が上がった。


「やだ、恥ずかしい」


慌てて列に戻り、体育館の前を通った時、


「部長はん!今晩、居酒屋でも行きまへんか?」


バスケットボールをついた正樹からのお誘いが。


「11時までならいいけど」


サラリと答える。


最後にサッカーゴールの裏を通り過ぎた時、ちょうど朝倉先輩のフリーキックが華麗にゴールネットを揺らしたところだった。


思わず手を叩くと、それに気づいた先輩が、


「11時だぜ!」


そう叫んだ。


「分かってます!」


手を上げて了解する。


すると、いつの間にやら後ろに来ていた太志が、


「部長、デートですか?」


「ならいいんだけど。サッカーの試合よ、ワールドカップ。はい、ウォーキング終了です!お疲れ様でした!」


「お疲れ様~!」


方々でねぎらいの言葉が交わされ、こうして汗をかくのはいいものだと、改めて思った。