フッフッ、ハッハッ。
フッフッ、ハッハッ。


「基本は二回吸って、二回吐く、です。でも無理しないで自分の楽な呼吸で!」


腕を勢いよく振り、
早足で校庭を歩く。


「ただし、呼吸だけは意識して!吐いて吸うことで、脂肪が燃えるから‼」


声を張り上げるのは、そうしないと最後尾でついてくる、太志にまで聞こえないからだ。


陸上部が怪訝な顔で指差して笑っているが、


「なにも気にしない!大変な思いして何周も何周も走る必要ないし、試合で勝たないといけないプレッシャーもないの!ただ歩くだけだから‼」


風を切って先頭をゆく。


「なにか質問があれば聞いて!」


「じゃ、はい!」


列の真ん中で手を挙げるのは、


「あ、野崎先生、どうぞ」


「これくらいの速さでもいいの?」


「隣の人と軽い会話ができるペースでいいんです!これより速いと、長くは歩けませんから!じゃ、他に誰か?」


「はい!」


「野崎先生」


「やっぱり毎日歩かないとダメなの?」


「まず、気負うのはやめましょう!歩くことを習慣づけて下さい!朝起きたら顔を洗う、寝る前に歯を磨く、その中に、一時間歩く、を入れて下さい!歩くことは足腰にも健康にもいいし、なによりえらくないので。学校の行き来に歩くのが一番、無理がないです!他に誰か?」


「はいはい!」


「………野崎先生」