「危ない!」


それが2つ目の声だ。


バスケットボールが飛んで来た‼嫉妬のバスケットボールだ‼


パッと体を離したマークと、


「ヒッ‼」


思わず頭を抱えて屈えたわたし。


やがて「お~!」という歓声に顔を上げると、生意気そうに笑っているマークが、人差し指でボールをクルクルと回していた。


「相変わらずムカつくやっちゃな!」


そう言う正樹は、いい顔をしていた。


マークと同じ、心を通わせた者同士が見せる、笑いたそうで笑わない顔。


「ちょっとなにしてたのよ!散々捜したのよ‼」


突っかかるが、


男2人は固く抱き合った。


言葉を交わし合う、男の友情を黙って見守る。


それなのに訪れる、


別れの時間。


「ほなな。きばって頑張れよ。そのバスケットボールはやるわ。俺がずっと使ってたやつやで」


「大事にします」


マークが、手を振りながら離れていく。