「はいマーク。ボクから」


長身の小林君が手渡したもの。包みを見ただけで、わたしには分かった。それは、自分もプレゼントされたことがあるからだ。


「実…感激です!」


道着を羽織ったマークが[突き]をしてみせると、周囲から拍手が起きる。


「それを着て、アメリカでもテコンドー広めてよ」


「実も先生になるよう頑張ります!」


マークが突く。


「男と男の約束」


実が突く。


2人の拳が触れ、


やがて離れた。


そして最後に。


「どうしました?真琴」


マークが心配そうに声を掛けるのも、もっともだろう。それだけわたしが、さっきからキョロキョロと忙しなく辺りを見回しているからだ。


思わず唇を噛む。


ここに来ていないのは、ドラマの撮影が入った夏美と、


「あの馬鹿‼」


くらいのものだ。


当たり前だが、わたしも実も、無理をいってバイトを休んだ。なんならクビになったって構わない!それほど、今日という日は大切なのだ。


たとえそれが、


別れだったとしても。