「なかなかいいとこあるわよね、アイツ」


「え?」


「アイツに頼まれたのよ、クシャミしてくれって。私もはじめは断ったわよ。でも、なにかハプニングがないと絶対に失敗しないって言うから」


そう言うと


「イッキュシン‼」と、嘘か真か、クシャミを連発する。


わたしはもう教室を飛び出していた。


(譲ったんだ)


走りながら思った。


わざと負けて、マークとわたしをキスさせようと…。


あれだけいがみあってたのに、ホント素直じゃないんだから‼


池脇家に乗り込むと、


「な、なんやねん!あんた土足やないの‼」


「正樹君は、ううん、正樹はどこですか‼」


「し、知らん言うてるやないの!」


「隠すとためになりませんよ!」


「あんたなぁ~」


呆れるチエを無視し、


それからも体育館やら捜したが、その日一日、正樹は見つからなかった。


(もう時間がないのに!)