「あ~、あ~」


言葉が続かないのは、マークが外国人事だから。


ではない。


沢山のクラスメイトに囲まれ、胸がつまり、目に涙を浮かべているからだ。


「あ~、楽しかったです。みんな優しい、温かい、やっぱり日本いいところでした。でも辛いです」


そう言うと、場が寂しさに包まれる。


グラスを中途半端に掲げたまま、静まり返る教室。


するといきなり、


「チンチン‼」


大きな声がしグラスが鳴った。


「ちょ、ちょっと石川さん、なに言うのよ急に!」


「なにってなによ?乾杯のことでしょ?」


真顔で首を傾げる。


「アメリカは違うわよ。それって確か……イタリアよ」


「うそ!やだ!早く言ってよ‼」


瞬く間に、耳たぶまで真っ赤になる。


そんな夏美の意外な一面に、教室内はドッと沸き上がり、


チンチン‼
チンチン‼


グラスがぶつあり合う音がこだましたのであった。