いつぞやのように走る。


「ちょっと石川さん!待って‼」


夏美が振り返るので、


「あなた、面白がってない?」


先輩との貴重な時間を奪われたのは、食べ物の恨みに等しい。


しかし、夏美は心底驚いたという顔から、泣き顔に変わる。


「あなたと友達になって良かったと思ったのに…」


まさか泣き出すとは思ってなかったので、慌てて、


「ご、ごめん!ごめんって‼」


「私、私…」


「わたしが悪かったわ、言いすぎた。心配で呼びに来てくれたんでしょ?ごめん」


必死で謝ると、
夏美は顔を上げた。


泣き顔でなく笑い顔。


悪魔の笑顔だ‼


「私、ドラマの仕事も入ったのよ。女優もいけるわね」


「あなたねぇ」


「でも本当よ。あなたと友達になって良かった。だって、退屈しないから!」


ベーと舌を出しまた走り出す。


「待ちなさいよ‼」