「なんやねん‼」


正樹が振り返って睨む。


いつもなら「やっぱり一緒に帰りたいんか?」くらい言いそうなものだが、今日はぶ然とした顔だ。


「このままでいいの?」


「なにがや?元はといえば、お前のせいやないか」


「どうしてわたしが悪いのよ?」


聞き返してから気付いた。


どうして喧嘩したのか、
その理由が分からない。


「あいつが、お前の話ばっかするで、ムカついてきてん。道着もろたとか、一緒にバイトしたとか自慢気に言うさかい、腹立ってきてん」


「なんだ、そんなこと」


「そんなことてなんやねん!第一、お前がはっきりせんでおかしなるんやろが!」


正樹の言い草に、こっちまで腹が立ってきた。


「なによ、はっきりしてるじゃない!」


「しとらへんがな!お前、そいつに告ったんか?返事待ちなんか?」


詰め寄る正樹に、
言い返せない。


なぜなら、


「話すと、ややこしいのよ」