〜花村太志の力士道〜


5200gで産声を上げ、
すくすく育ち過ぎた。


「幼稚園のあだ名が小結でした」


遠い昔を思い出すように、太志の語りは続く。


「小学校で大関で、中学校で....」


「横綱なわけね」


だが、気の小ささとは裏腹に、歯止めがかからない体重増加と周囲の期待。


「相撲部屋に入門する日に、三日間、家出したんです」


「そうなんだ。よっぽど嫌だったね」


「こう、勝負事に向かないっていうか、気が弱いんです」


そう言って俯くので、


「花村君は、気が優しいだけよ。なにも男子が全員、勝負事に強いわけじゃないし、花村君は花村君に合った、やりたいことを見つければいいの」


励ますつもりで、
軽くポンと腕を叩く。


その感触といい、弾力といい、なんだか気持ちがいいので、つい力士並に叩いてしまう。


「でも、あと19人、集まりますかね?」


辺りを見回した太志が、


地面に落ちているチラシを拾う。


そうだ、


そこが問題なのだ。