「そんなことより止めないと怪我しちゃうわ!」


駆け寄るが、
近寄り難い。


「誰か腕っぷしの強いの呼んでこないとねぇ」


辺りを見回した夏美が、


「な、なんなの⁉なに部屋?」


「そうだ、あなた名前なんていうの?」


「花村太志です」


「じゃ花村君、お願い、あれ止めて」


"あれ"を指差す。まだ泥んこで殴り合う、あれ、ら。


「ぶつかり稽古だと思ってさ」


そう言うのは、
もちろん夏美だ。


「わ、分かりました」


一つ頷くと、夏美の冗談もなんのその、花村は片足を高く上げ、なんと四股を踏み出した。


それがまた様になってる‼


ウォー!と叫び声を上げた花村太志は、すり足で2人に体ごとぶつかると、あれだけ互いを引っ張りあっていた2人は、反対方向に吹っ飛んだ。


そんな太志の姿に、


まわし&まげ


がダブって見えたのだった…。