「練習いいの?」


パソコンの画面に向かう、真剣な悠太の横顔に尋ねる。


「バレたら殺されるかな、鬼監督だし。はい、出来たっと」


「も、もう出来たの?」


画面に移る、わが校のホームページ。


ここに大々的に[ダイエット部]が宣伝されており、太った女子をクリックすると痩せるという、まさにイリュージョン‼


「す、凄い!凄いじゃん‼」


「でも、地道なチラシ配りも大事。インターネットより人から人のが確かだし」


パソコン得意の、肌が焼けた野球部員。


「はい、じゃ次」と悠太に、校庭に連れ出され、されるがままグローブをつけられ、抵抗する間もなく始まるキャッチボール。


「思いっきり投げて!」


豆粒ほど小さい悠太に向かって、ボールを投げる。


大きな大きな軌道を描いて、グローブにスパンっ‼


「レギュラーなれるよ‼」


ゆっくり戻ってくるボールが、手の中に戻り、また思いっきり投げる。


それを繰り返しているうちに、さっきまでのモヤモヤが晴れていく。


「ありがとね」


そう口にして、


わたしはボールを放ったのだった。