「野崎先生」
職員室に入り、わたしは一人の先生に声を掛けた。
「あら細井さんじゃないの、ってやだ!痩せたわねぇ‼」
「ちょっと先生…」
「痩せたじゃない!」
「先生、わたし力士じゃないんで」
パンパンと体を叩く、
野崎をやんわり諭す。
ゴメンゴメンと言いながらも、わたしの変貌ぶりに目を細める、野崎和代。真琴が一年生の時の担任だ。
「わたし、先生にお願いがあって」
思い切って切り出した。
「どうやって痩せたか教えてくれたらいいわよ」
含み笑いをしながら言う。
まだ20代後半でこういうお茶目なところが、生徒に人気ではあったが、今回、野崎を頼るのには、明確な理由があった。それはおのずと分かるであろう。
「いくらでも教えますから」
「随分と気前いいじゃないの。で、お願いってなんなの?」
野崎の問いかけに、
一つ息を吐き出し、
「わたし、新しいクラブを作りたいんです」