「それ可愛いもんね、羽織ってみ」
言われるがまま羽織り、鏡の前に行くと、なかなか様になっている自分がいた。サイズもピッタリだ。
「ちょうどいいみたいね。じゃ、すみません、これより一つ小さなサイズのを下さい」
友加里のまさかの注文に、
「しかしお客様、ワンサイズ小さめですと、かなり窮屈かと?」
「いいのいいの、この子、七夕までに痩せますから」
「ちょっと友加里」
腕を掴んで引き止めたが、
「あの浴衣を着て、朝倉先輩と七夕祭りに行きなさいよ」
さっさと会計を済ませてしまったからには、
「ありがとう」
「いいってこと。きっと先輩も気に入るって」
友加里の励ましにも、
素直に返事ができない。
刻一刻と迫る、七夕。
だが、もっと真に迫る"明日"があるではないか。
一分一秒もムダにはできない!
「友加里、こっち向いて!」
わたしは、シャッターを押したのだった。