一、大きく息を吐く。

二、目を閉じて集中。

三!パッと振り返り、


「われぇ!なに触ってけつかんねん‼」


車内に響き渡る怒声。


シーンと静まり返る中、皆の注目が一点に集まる。


わたしに、じゃない。


「オッサン!ええ年して恥ずかしないんか?」


鋭い関西弁が聞こえる。


いや、関西弁しか聞こえない。


人混みと、人混みによる窮屈さで見えないのだ。


"やってない"やら"無実"だと弁解する男。


「アホかオッサン!こっちは見てんねんで!観念しいや‼」
(声からすると若い男?)


渾身の力で振り返ると、


"バスケットボール"が目に飛び込み、礼を言おうと顔を上げた時、電車が駅に到着し、乗客が放出される。


「はよ降りんかい‼」