ガタンゴトン。


電車に揺られる。


流れていく美しい夕日に目を奪われ、といいたいところだったが、目の前にはオッサンの禿げ上がった頭部が。


視線をずらすと、吊り革に掴まる女性が顔を歪めている。


"痴漢かしら?"


しばらく睨みつけていたが、女性は次の駅でおりていった。


「フゥ~」


人の波が引き、重たい息を吐き出した。


今のうちだ!


空いている席に飛び込もうとしたが、再び、人の波が押し寄せ、なんとか吊り革だけは確保する。


「暑いし」


人の熱気で、電車内はムンムンとしている。


今日は一人で買い物だ。


友加里になにか、記念になるようなプレゼントを探しに遠出したのだが、ちょうど帰宅ラッシュと重なってしまったというわけ。


息苦しいけど、


わたしは心配ない。


なにがって?


それは、


"痴漢"