「真琴、ごめんね」
友加里の涙声の謝罪に、
暖かく言葉を掛けよう、そう心に決めていたわたしは、
キッと振り返ると、
「もう、もう帰ってくるな‼」
「え…」
見る見るうちに、友加里が泣き顔になる。
それ以上に、グチャグチャの顔を自覚していたわたしは、友加里の元に歩み寄ると、腕をガッと掴んだ。
「帰ってくるな!わたしを、わたしをこんな寂しい目にあわせて、途中で投げ出して逃げ帰ってきても、わたし、入国させないから!友加里は、友加里が歌がうまいことは、わたしが一番よく知ってるから!絶対に夢を叶えてきなさいよ!」
「真琴…」
「わたしは大丈夫!友加里が居なくたって……だいっ、丈夫なんだから‼」
友加里の震える肩を叩く。
「ごめんね、何度も何度も言おうとしたんだけど、どうしても言えなくて」
そう言う友加里の顔は、酸っぱそうだった。
「なによ、梅干し食べたみたいな顔して」
(ん?どこかで聞いたセリフ)
「だって、だって!」
歯を食いしばっているのは、友加里だけではない。
「も、もう限界!許す!」
声を上げたわたしは、同時に泣き声を上げ、同時に友加里も泣き出し、
2人は泣いて抱き合った。