「そこらへん適当に座って」
(て言われても…)


わたしは部屋を見回す。


資料と思われる紙が床を隠し、辺りは本本本、本の山。一冊を手に取ってみると、


[池脇チエの絶対に痩せられる5つの法則]


「それ結構、儲かったんよ」


池脇チエが悪い笑みを浮かべる。


豹柄にスパッツ、固めのパーマの作家さん?


「作家さんなんですか?」


「そないたいそうなもんやないわ。あんたでも書けるに。あんた、真琴ていうたな。ええ名前やないの。琴って響きがええわ。親御さんに感謝せなあかんで」


「ハァ…」


「はい、余計なこと喋っとらんと、はよしよか」
(あなたが言いますか?)


「カウンセリングですか?」


少し身を乗り出すが、


「ただのオバチャン同士のお喋り」


「オバチャン同士って…」


「なんやの!自分だけ若い気なっとったら、肥溜めはまるで!あんたも、あと五年もしたら、立派なオバチャンなんやから!」