「はよ、なにボサッとしてんの‼」


ムッとしつつ、2人のもとへ。


大阪弁が、しきりに大阪弁で声を掛ける女性に軽く会釈したが、彼女はわたしなど見ていない。


正確にいえば、わたしが手にしている冷たいペットボトルしか、この世には存在しないというように…。


「庭仕事も結構、重労働やろ?ノド乾いたんとちゃう?はよ、渡したげて」


早口で言われ、女性に冷水を手渡した。


ブカブカのウェア。袖から伸びた手首は、棒のように細かった。


「きちんと体を動かしたんやから、飲んでもええんよ」


それまでとはうって変わって、優しい声にビックリだ。


(それから五分間)


1.水を見
2.首を傾げ
3.目を閉じ
4.やっとキャップを開け
5.また閉め
6.1に戻る


すると、とうとう女性は、ペットボトルに口をつけた!


一口、水がノドを通る。


顔を歪めたかと思うと、喉を鳴らして飲み出す。口からこぼれるのも気にせず飲み干す様は、とても美味しそうに見えた。


しゃくりあげ、肩を震わせ、女性は泣き出し、泣き崩れる。自然と手を差し伸べるかたちとなる。


「美味しかったんよね?何日ぶりかの水やもんね」


2人して泣き出すと、なんだかわたしまで泣けてきた。