屋上での再会。


一瞬だけ目を合わせた2人は、もうお互いあさっての方向を見ている。俯く美鈴と、顔を背ける一馬。


"こりゃ、大仕事だわ"


一つ息を吐き、


「深呼吸しましょう!気持ちいいから!」


「ウ~ン!!」と力一杯伸びをする。物珍しい動物を見るような目で見る2人に挟まれていたが、小さな「ウ~!」が聞こえ、美鈴が太陽を見上げて温かい光を浴びていた。


程なくすると、


「ポキポキッ」と首の骨を鳴らす一馬。"喧嘩するわけじゃないんだから"とツッコミたくなったが、これで少し緊張がほぐれたかな。


「じゃ、カウンセリング始めましょ」


「え?」と美鈴。
「は?」と一馬。


そんな怪訝な表情の2人。そんなこともお構いなしに、


「嘘はダメ。いくらカウンセリングしたくても、嘘で心を隠してたら、いい答えは出ないもの。これから嘘言ったら怒るから。いい?分かったの?」


2人を交互に睨む。


「返事がないのはOKとみなしますから。じゃ、美鈴さん、アイツのこと、好き?」


真っ直ぐ"アイツ"を指差す。


ようやく顔を上げて相手の顔を見た美鈴だったが、すぐに視線を外すと、


「別に」


「はい嘘!」