授業が始まった。


だが悠然と教室の前を通り過ぎる。


わたしが向かった先、


それは、


「先生!神田さんを少しお借りします」


堂々と、さもそれが当然のことのように胸を張るわたしに、一同は唖然としている。


「ちょっと来て下さい」


一番、唖然としている美鈴の手を引く。


「おい!もう授業中だぞ!自分の教室に帰りなさい‼」


教師の恫喝に、


「授業よりも大切なことがあるんです‼」


ひるまない。


"あ~、わたし、先生に口答えする生徒だったかしら?"


とは思ったが、唯一、今この状況を楽しむかのように笑っている先輩と目が合うと、なんだか勇気づけられた気がした。


少し朝倉に向かって頭を下げ、美鈴を引き連れて、向かった。


いや戻った。


戻るべく場所に戻すのだ。


元の場所に戻すのに、今さっきまで居た場所に戻し…。


"ええぃ!ややこしいわ!"


わたしは優しく、


美鈴の背を押した。