「あ、危ない!」


楕円を描いたボール(サッカー)が、一人の生徒を狙っていた。


駆け出してボールを弾こうと懸命に手を伸ばすも、


(ダメだ!間に合わない‼)


咄嗟にわたしは足を出した。


長く柔らかい足。


この間、教わったばかりの"横蹴り"を繰り出すと、つま先がボールを突き、ボールの軌道がそれていく。


「大丈夫ですか?」


標的に声を掛けるも、青ざめた的は震える声で、


「ありがとう」と言うだけ。


ガヤガヤと騒がしい廊下に、


当然の如く響き渡るのは、


「ちょっと危ないじゃないの!謝りなさいよ‼」