屋上に上がる。


伸びをする元気もない。


アイツも居ないし。


あんな怪我して、


居るわけがない。


それなのに、キョロキョロするわたし。


「なんだ?俺様に用か?」
(い、居た!)


「そんなに会いたかったのかぁ~?」


「ちょ、なにしてんの?まだ怪我治ってないのに!」


「あんなのはただのかすり傷だぜ。病院の飯がまずくてよ」


腕にギプスをした一馬。


「それよりよ、ありがとな」


少し照れ臭そうに言う。


「な、なにがよ?ヒマだったからお見舞い行っただけよ」


「そんでもよ、ずっと、手、握っててくれただろ?」


「え…」


「薬きいててあんまよく覚えてねーんだけど、一晩中、握っててくれたろ?だから、礼を言ってやってんだよ」


軽口を叩く一馬に、軽口で返す真琴、といいたいところだったが、


(…わたしじゃない)