「ハナ、トゥル、セッ、ネッ‼」
威勢のいい掛け声とともに、なぜか、屈伸運動をする。
(今日は遊びに行くのでは?)
隣の小林実を睨む。
でも、いつもと違う。
アキレス腱を伸ばしている実は、レジで小さくなっている"後輩・小林君"ではなく、とても男らしく見えた。
ただでさえ大きいのに、キュッと黒帯を絞めた道着が、より凛々しくさせている。
「では、突きの練習をしましょう」
講師の先生が、右手を真っ直ぐに突く。
呼吸、拳、足、
この三つが一つになるのだ。
全くの格闘技経験ゼロのわたしも、見よう見まねで拳を突き出す。
「なかなかうまいですよ、細井さん」
「そ、そう?」
満更でもない。
いつの間にか、わたしは真剣に取り組んでいた。
"テコンドー"だ。