夏美と一瞬、目が合う。


なぜか咄嗟に視線をそらしたが、何事もなかったようにすれ違う。恐らく、すでに彼女の中では過ぎたことなのだ。


ホッと安心する。
(わ、わたし悪くないけど)


トイレから出、足が向かうのは…。


朝倉の教室だった。


「先輩!味、どうでした?」


「ああ、美味かったな。お前、めちゃくちゃ料理うまいな」


裕子と連れ立って教室から出てくる朝倉。


踵を返したわたしは屋上に向かいかけたが…。


やめた。


なんだか一馬に悪い気がしたからだ。


一番に屋上に向かうのならともかく、向かう足の順番は、気持ちをそのまま表しているようにも思えたから。


上りかけた階段を下りると、


「おぅ、デブチン、俺様に会いたくなったか?」


「誰がデブチンよ!わたしは真琴って、ちゃんとした名前がありますから‼」


「じゃ真琴、俺にキスしたくなったのか?」


浜辺で見せた、


キス顔で迫る一馬。


「ホッペならいつでもしてあげるわよ‼」