2人は抱き合っていた。


背の高い先輩が、小柄な裕子を包み込むようにして、2人は抱き合っていた。


"優しさ"が溢れた抱擁。


2人が、ボヤけて見えなくなる。


わたしは走った。


流れていく涙を拭い、無我夢中で走った。


どこに行くわけでも、どこに行きたいわけでもなかったが、気がついたら、いつもの場所に飛び出していた。


屋上だ。


雨が強く降っている。


ここなら誰も居ない。


雨に濡れるがまま、金網にしがみつき、


泣いた。