(ハァ~、なんでわたしが)


半ば腹を立て、半ば呆れ、廊下で待つ。


少し離れた柱の影には、目を輝かせている裕子。


あれから三度の書き直しの結果、渋々ながら、ようやく友加里の"OK"が出た。出たのだが、


「お腹が痛くて渡せない」と言う。


挙句、


「細井先輩!お願いします!」


ときた。


「ハァ?なんでわたしが?嫌よ、絶対に嫌よ!」

「細井先輩しかいないんです!だからお願いします!もう二度と付きまといませんから!」


最後が効いた。


だが代わりに一つの条件を出した。


"ついては行くが、ちゃんと自分の手で渡すこと"


「お、どうした?」


教室から出てきた先輩。


「あ、先輩、ちょっとだけいいですか?」


それだけ言うと、顔を引きつらせ、脂汗をかいている裕子を引っ張る。


「大丈夫よ。早く済ませてトイレ行きなさい」


今度は、


ポンッ、


軽く背中を押した。