人はそれを恋と呼ぶ



植田の目は、俺を見ていなかった。


「おはよう、由紀。やっと風邪治ったんだ。良かったじゃん」


美穂がそう声をかけると、植田はゆっくりと俺達の方に近づいてきた。


2人の間には、ピリピリとしたムードが漂っているようで、俺はその雰囲気に息をのむ。


な、何だ一体…?


植田は、俺とは一度も目を合わせずに、俺達の側を黙って通り過ぎた。


「あら、由紀ったら何よ、あの態度…」


美穂が植田に聞こえるような声でそう言った。


俺は我に返って、植田の後を追う。


「植田!!ちょっと待てよ…!」


久し振りに会ったのに。会いたかったのに!


植田は後ろを振り返ろうとはしない。