植田の席は俺より後ろで、その空席を時々振り返る。
教室に植田がいない事を意識した事なんてなくて。
彼女がいつも誰と仲良くて、休み時間をどう過ごしてたりとか、お昼休みにどこで弁当を食べてるのかとか。
彼女が何が好きで、何が嫌いか、どんな趣味なのかとか、家族構成とか。
俺は何にも彼女の事知らない事に気付いた。
知ってる事は、彼女には好きな男がいるといういらない情報だけ。
一人で帰る事はめったにないのに、なぜか誰か他の奴と帰る気がしない。
隣に彼女がいることに、いつの間にか慣れていた事に気付く。
「…会いてぇな…」
そんな事を呟くのも、
初めて。

