あたしの中にいた、声だけだった彼が急に色づいて、さっき瞼に焼き付いた彼の姿が動き出した。 優しそうな顔だった。 ううん、彼が優しいのは知ってる。隣の家の犬に話し掛けてる彼は、いつも優しかった。 「え?さっきの最後に会計した人が…由紀の言ってた彼なの?」 舞とレジに並んで立っていたあたしは、舞の声にコクコクと頷いた。 あたしは今まで感じた事がない感覚に戸惑っていた。 だって…だって彼… 「めっちゃ…かっこよかった…。どうしよう、舞…」 舞が、ものすごく驚いた顔であたしを覗き込んできた。