ぼろっちい団地の戸をたたく。



インターホンを押しても返事がないからだ。



「坂野さーん。いるんでしょー?返事くらいしてくださいよー」



まだ出てこない。



「おーい!あんま叫んでちゃ近所迷惑にもなるんですよ〜」



ひたすら戸を叩く。



すると戸の下の隙間から小さめの封筒が出てきた。



「今日はこれで勘弁してくれ…」



戸越しに坂野さんと思われる声が聞こえた。



「一、ニ、…あら〜全然足りてませんね」



中身は三万だった。



「もうとっくに期限過ぎてますからね…
組長もいつまで待ってくれるか」



「来月にはもっとまとまった金が出せる。正社員で雇ってくれそうなところがあるんだ。
それまで待ってくれ…」


弱々しい。情けない。



「…分かりました。次は頼んますよ。
ったく今日も俺じゃなかったら坂野さん、どうなってたか分かりませんよ」



きっと戸なんかこじ開けられてるだろうな。



「……ああ…次は必ず…」



俺はその場を後にした。



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