幼い頃から私はこう言われ続けている―――

 ―――景子ちゃんって、なんだか話かけにくいよね―――
 ―――私達とは合わないかも―――
 ―――全然笑わないし、表情変えないから、何考えてるんだか分からない―――

「中谷景子ってさ、自分は頭が良いから低レベルの人達とは関わらない―――って顔してるよね?」

「それ分かるー! 私なんか前に授業中、すこ~し喋ってただけでさ、うるさい! あなた達邪魔!! ってすっげー顔で睨まれたんですけど~」

「マジで!? それ、かなりウザイわぁ」

「でしょ!? その他にさぁ―――」

 生徒がまばらになった放課後の教室で、ミニスカートにも拘わらず足を広げ、制服を着崩し椅子ではなく我が物顔で机に座り、私とは真逆の3人組みが今もまた私の事を口々に言う。

「ったく…めんどくさい」

 教室の扉に姿を隠し、こうして聞いてしまうのは何度目だろう。
でも、こんなことを耳にしてしまっても、何とも思わない。
 正直、ショックを受けるより前に、めんどくささが生まれてしまうのは、傍から見たら何とも可愛げのない性格。
 一度、呆れたように息を吐き出して、教室の扉をわざと大きく音を立てて開け放って足を踏み入れる。
それと同時に、がさつな話し声がピタリと止まったのを目にしても、上履きと床を擦らせて自分の席へと向かい進む。
 あのどぎついメイクをした目の視線が私の動きを追っては、こそこそと耳打ちをする姿は見なくても分かってしまう。
 こんなの、こんな連中から毎度のことだと、そっとめんどくさげに息を漏らす。

 こんな場所で、くっだらない話してる暇あったら、とっとと帰れ。