雅也は、杏の肩を抱き言う。

「アン、大丈夫だよ
 イッキは、事故と
 ツアーの疲れで、今は
 眠っているだけだから」

続けて、真野は言う。

「杏さん、この事は
 身内の方以外には、今はまだ
 他言しないで頂きたいのです
 
 マスコミに知られては大変な
 事になってしまいますので
 
 彼の容態を見続けた後に
 折を見て、記者会見を開き
 私から説明する予定で
 いますので
 宜しくお願いします」

「分かりました」

樹に逢う為には、インターホン
で許可を取り、病室内へ入る。
    
まず、スリッパを履き替えて
専用のガウンを着用する。
    
そして十分に手を洗い、消毒液
を付ける。
    
このように集中治療室に入る為
にしなくてはいけない事を 
看護士に聞きながら、杏の心を
不安が襲う。

『こんな場所に入らなくては
 いけない程に、樹の症状は
 重い・・・・』