昨夜の樹は、皆の前で
確かに杏に告げた・・・
 
『結婚しよう』
  
その全く予期せぬ言葉に
杏の心はずっと囚われていた。

泥酔した彼が発した言葉は
本気なのだろうか?

以前二人は、一度
結婚の約束を交わした。

しかし、姉百合と樹との過去
の関係。

二人の間に子供がいるという
事実に私達は、別れを選んだ。

あの日交わした約束は

今はもう無い・・・?

杏は、お店の片づけを一人
黙々と進めていた。
 
テーブルを拭いている杏の元
に雅也がやって来た。

「おはよう、お父さん
 空瓶は全部、あそこに
 まとめてあるけど
 いいかな?」

「ああ、ありがとう
 なんだ、アン・・・
 眠れなかったのか?」
  
「ううん、眠ったよ・・・
 朝の光で目が覚めて
 しまったから
 片付けてたの」