「遠宮君ってどんな絵を描くの？」


準備をしていてからか、突然のこの言葉に僕の心臓は飛び出るかって位に一瞬だけドキッとした。


「たいした事はないよ」


平静を装って僕はいそいそと描き途中の絵を机に広げてから、

バケツに水を汲みに近くの水道まで行こうとしたその時。


「遠宮君って優しい絵を描くんだね。絵を描くのは苦手だから何だか羨ましいな」


彼女が横から顔を出し描き途中の絵を覗き込んでくる。

彼女の髪の良い匂いが僕の傍を漂った。

心臓の音、聞こえているんじゃないかと思わず由乃の傍から離れた。


「遠宮君？　何で逃げたかは分からないけど、一つお願いがあるの」

「何？」

「その絵が完成したら、真っ先に私に見せて。
て言うか、過程が見たいからまたこの時間に此処に来るよ。良いよね？
他の部員さんには迷惑はかけないから」