『いい加減になさい!』


その怒声と同時に、鍵を閉めた筈の窓が開いて有得ない程の強風が僕を襲う。

これはそう。“彼女”が今の“彼女”になって出来るようになった行動の一種である。

彼女はきっと布団をはがしたいと思っている。でも強風でも布団は飛ばない。

でもその強風はベッドの中の僕でも耐え難い物だった。集中して眠る事が出来ない。

いや、眠っちゃいけないとは分かっているんだけどね。


「仕方ないか……」

『その言葉はない上に、最初に言うべき言葉を抜かしているよね?』


ベッドから起き上がり瞼を何度かこすってから“彼女”の方を向いて、僕はこう告げる。


「……おはよう、由乃」

『ん。おはよう、幸』


これが“彼女”との一日を過ごす最初の会話。

既にそれ以前に会話をしているって言われたら否定はしない。でもこれは僕達の日課なのである。