『幸、もう朝だよ! 起きないと遅刻するよ?』


聞き慣れた高いトーンの声が、僕を眠りの世界から引き剥がす。

まだ眠っていたいとベッドの中に潜り込んだまま、

僕は僕なりの必死の抵抗をして見せた。

しかしそうする事を“彼女”は許す筈はなかった。


『こーうーくーんー』


その声は徐々に顔を見ていなくても怒っているんだろうな、

という事が分かるくらいに低く、震えていた。

僕はこの先を分かっていながらも眠りの世界へと戻ろうとしてしまう。

“彼女”からすれば何も分かっちゃいない愚か者、なんだろうな。