表紙をめくったアナタは、もう一度首を傾げました。

その本には、目次がありませんでした。そして、中表紙にさえも、タイトル、作者が記載されていませんでした。

もうアナタは、「これは購入者が自分の物語を手記するタイプの本だ」と決めつけました。

次のページから、物語は始まっているようです。ページが筆圧ででこぼこしているのが窺えたので、アナタの予想は的中しています。

さて、どんな物語かと、せめて冒頭は読んでみようとしたアナタは、やがて、手を止めました。

本の中では、ひとりの人物の、朝からの行動が淡々と綴られていました。

起きてからなにをしたか、なにを食べ、なにを思い、何時頃に家を出たか。

事細かに綴られたそれに、しかしアナタは感心するのではなく、恐ろしくなりました。

なぜ、なら――物語の登場人物が、アナタだからです。しかも、始まりは、ちょうど今朝の出来事から。