タイトルがないばかりに、アナタはその本の内容が気になって仕方がありません。

もとより、特別な目的もなく、おもしろい本はないかと探求しているアナタです。

異様な存在感を放つそれに、手を出さずにはいられませんでした。

真っ黒い本は、背表紙はおろか、表紙にさえなにも書かれていませんでした。

作者の名前さえ、ありません。

アナタは、想像しました。これはどんな本だろうかと。

あからさまに中身を隠す黒い表紙……年齢制限のなされている、成人向けものでしょうか。

それとも、真っ黒いだけに黒魔術の手引き書でしょうか。

はたまた、表紙のインパクトだけで、内容はただの小説か。

最近は、表紙も中身も無地のものもあります。それは、購入者が自分の物語を手記するもので、その可能性も否めませんでした。

中身は、なんにせよ。ページを開いてみれば一目瞭然でしょう。

アナタは気持ち半分期待し、もう半分はつまらない結末を覚悟しながら、本を開きました。