やがてまた忙しい仕事の打ち合わせを工場で終えた。

そのときにはユキの腹痛も治まったらしい。

工場の5階に事務所から階段で降りていくとき、
ていうかエレベーターすらない5階まで階段で上がっていくときどんだけしんどいか、
天井が高いから日本だったら7階くらいの高さじゃないのかと思いながら、
私は打ち合わせ内容にメモ書きしながら階段を下りていた。

特別危ない階段でもなかったが、
ユキは突然私に腕組みをしてきた。


「気をつけてください。危ないですよ」


「だいじょうぶだって。そうそう、さっきのハゲ社長見た?あーゆーやつが危ないっつうの。思いっきり太ってんじゃん。階段すべったら丸くなって1階まで転がっていくんだろうね」


「でも階段丸くなってるからすべるとほんと危ないです」


「そういうオチじゃないんだけど」


いくらなんでも老人ではない。

その老人を支えるような腕組みは
いかにも弱々しい老人を介抱しているようにしかみえないのだが。

オヤジギャグも通用しないし。

ただこのシチュエーションが妙にこっぱずかしい。

腕を組むんだったらまだいいかもしれないけど、

腕にがっしりと両手でしがみつかれたら、
階段まともに下りれるかわかんない。

なぜかというと胸の感触がビンビン伝わってくるんだよね。

1段、1段、そしてまた1段。

体が揺れるたびに胸の弾力と柔らかい感触まで伝わってくる。

白いブラウスの上からも押しつぶされてる乳房まで揺れて動いている。

私は1階へたどり着くまでの間、
ずっとメモを書いていた。

それ以外にどうすればよかっただろう。

ユキはその間ずっと私の腕にしがみついていた。

洋服から始まり、髪の毛、唇、お腹、胸。

体の1部分がこれほど愛おしく感じたことはなかった。

お互いの体をかすめるようにして触れ合う。

こんなセックスってのもありかなって思う。

距離があって一線を越えないそんなセックスってどういうものかな。

イクことできるかな。

どれくらい濡れているか想像しただけでけっこう勃起するもんだな。

メモを書いてるけど違うことを頭の中に書いていた。