「こんな場所で練習を?」

安時が聞くと、初香はニコッと笑った。

「えぇ。この場所は落ち着きますから。安時様は、なぜここに?」

初香は、優しい声音を響かせた。
思わず、安時は胸を高鳴らせる。

「…いえ、その」

言えるわけない。

初香で頭がいっぱいで、仕事に手をつけられなかったなんて。

「?」

初香は、首を傾げて見てくる。

胸の高鳴りが、今度は有り得ないくらいに大きくなり、止められない。

「初香殿…」

そう呟いて、グッと初香を抱きしめる。
「…好きなんです。あなたが、初香殿がーー…。返事はいりませんよ。初香殿のような美しいお方に俺のような人が…」

「私も安時様が大好きでございます!」

言葉を遮って、発せられた言葉。
安時は硬直した。