笑うな、そこ…
俺は必死なんだ。
あいつがまた行き当たりばったりの妙なこと思いついて。
気づいたら日本一有名な大型テーマパークの中だよ。
今日は買い物に行く予定じゃなかったか?
なんでもいいが…
買ったばっかのTシャツに着替えんのか?
「フツー女の子がミニー着たら、ミッキー着るでしょ?」
ってそれが許されんのは十代までだろ…
って言ったら秒殺されんだろうな。
すれ違う夏休みの浮かれた中高生の視線が痛い…
だからちょっと振り返って笑うな!
似合わないのは俺が一番知ってるっつーの。
でっけーため息をついたら、白い目で見られた。
「夢の国でそんな疲れた顔するのやめてー」
はいはいはい。
今日はとことんお前に付き合うよ。
ったく……
ふいっと見やった視界の中で、あいつが浮かれていた。
バカだな…
「うちらも一緒に踊ろうよ!」
しょうもないことに一生懸命になるのはいい大人のすることじゃない…
なんて言ったら瞬殺だな。
しょうがねぇなあ…
しょうもないことに一生懸命なあいつは、すげー楽しそうにはしゃいでいる。
でもな。
あいつのそういうとこが、時々むしょーに羨ましい。
そんな俺も大概、バカかもしれん…
だがこれだけは言っておく。
「俺はぜってぇー踊らねーからな!!」