翌朝、目覚めると、町中が騒がしかった。

「おはよう、おばあちゃん。もう朝ごはん食べたの?」

二階から降りてくると、おばあちゃんの顔が曇っていた。

「そんなことより、アレク、あれを見なさい」

おばあちゃんが、窓の外を指差した。海のかなたにそれはあった。
そこには巨大な帆船がたたずみ、朝日を浴びていた。
それはまるで異形の堕天使のようだった。
町中の人々がみな、波止場に集まっていた。群集はみな、驚いていた。

「船?なんだってこんな小さな港町にあんな大きな船が」

「北の戦艦よ。なんでも竜を殺しにいくらしい」

「竜を殺しにだって?正気かよ」

「竜は、星より高く飛び、月と太陽を治める。そう言い伝えにはあるけれど、ほんとに見た人はいない。アレク、あの戦艦にはくれぐれも近づかないでね。なにが起こるかわからないから」


「そんなことわかってるよ。心配しなくていいって。じゃあ僕はマキのところにいってくるから、後は頼んだよ」

「お手伝いかい?」

「まあそんなとこ」

ウサギを売るだけじゃなくて、レストランで働いている幼馴染のマキの手伝いをして、お小遣いを稼いでいた。なにもなくてもお金は必要だし、と死んだお父さんが言っていたっけ。