“京子”が世間で言うブリッコとか男好きだとかタラシなどに、属さないと認識されていることを不満に思う。

なぜなら、男女平等に接している演技をしているからだ。


男の前で露骨に態度を変えたり、女に意地悪をしたりしない。

狙って香水をつけたりしないし、女の悪口を言ったりしない。


女にも男にも、京子は愛想良く接している演技をしているのだ。



カップルを別れさせたり、好きでもない男を翻弄させたり、騙しているなんて卑怯だ。


もちろん社会人になって社交辞令の1つや2つ言えない方が問題だろう。

けれど相手が気分を害さないならば、何をしても良いというのだろうか。


少なくとも林は彼氏がいないと言う京子に純粋に片思いをしているし、

香織は京子をきっかけに林に振られたのだ。


ブリッコだと思われないように、ひっそりと媚びてるなんて卑怯ではないか。




正直に言えば、本当は自分も露骨に男の前で態度をコロコロ変えてみたいと思う。

けれど香織はそうすることで女の子が嫌な思いをすることを知っているし、男を勘違いさせてしまう可能性があることも知っているから、

なるべくぶりっこしないよう接するのだ。


人の気持ちを配慮していると思っているからこそ、だ。



そして、こういう風な考えを持てないこと自体、

―――京子への苛立ちは募る一方だった。