短編小説の集い。

 

真新しい傘は五百円しただけあって、丈夫そうな作りで大きかった。

一人ではありあまる大きさは、肩を寄せれば二人は入れそう。

それを独り占めして、バス停から距離を置く。


「待ってよ、なーつ」


えりは傘を支える僕の右腕にしがみついてきた。

腕にすっぽり入りそうなぐらい小さく、か弱く見えた。

僕は決して太くはないが、二人で入ると傘は隙間を失った。


「冷たい! なつ、もうちょっと左に寄ってよ。濡れちゃうじゃなーい」

「こっちも左肩濡れてる。もうちょっと狭まれ」